とある激貧冒険者達の末路

とある激貧冒険者達の末路
〜テストプレイの悲劇(喜劇)〜

「人はパンのみにて生きるにあらず。されどパンなくして生きる事かなわず。」
「俺達は、『餓えたサル』だ!!」

金がない…。その一言が不幸の始まりだった。

ゲームマスター(以降GM):それじゃぁ、テストプレイをはじめよう。キャラクターの作成方法は分かってるはずだから、出来上がった人から自己紹介してくれ。
プレーヤー1(以降ボーガ):はいよ。名前は「ボーガ」人間の戦士。知性が5しかないんで、戦闘になる度にバーサークします。誰か止めてね。
プレーヤー2(以降マグ):時事ネタで「まぐわいや」人間の盗賊。運勢が良いだけです。
ボーガ:いいじゃん。個人修正がプラス側なんだから。俺マイナスだぜ。
マグ:ははは…。
GM:…
プレーヤー3(以降ウォール):うぃっす。ドワーフの「ウォール」っす。
GM:壁?
ウォール:こいつ(ボーガを指さす)が壁壁言うから。(笑…)
ボーガ:だって壁だろ。耐久度24点もあれば。
ウォール:そりゃそーだげどよ…
プレーヤー4(以降カイル):やっとできたよ。人間の魔術師で「カイル・ノーマン」。誰かやらないとまずいっしょ。
GM:そうだね。一応、一通り揃うし。
カイル:うん…。(眠そうに目をこする。)眠い…。(前日全く寝てない。)
GM:…それじゃぁ、はじめよう。まずは現在の君達の状況だ。

一般生活と決別し、一攫千金の夢や、世界中に自分の名前を知らしめたり、龍を討ち伝説の騎士になろうとする者達の、第一歩、冒険者となったのである。

GM:君達はカザフの町にいる。人口3000人程の町で、街道に造られた交易都市だ。東には鉱石採掘場の町、西には要塞都市ラングリルがある。都市国家と言うこともあってか、街道の整備はあまり良くない。そこで君達冒険者の出番と言うわけだ。荷物の宅配や買い付けと言った簡単な事から、護衛、賞金稼ぎ、仇討ち、魔物の討伐等、危険な事まで様々な仕事の斡旋を行う場所がある。通称『冒険者ギルド』で大抵のものはここで仕事を受ける事になっている。
ボーガ:『カザンの町?闘技場があるのか?』
GM:そんな物はない!!
マグ:どぅどぅ…。
GM:はぁぁぁぁぁ…。
マグ:それじゃ、その斡旋所にいってみますか。
GM(斡旋所の親父):いらっしゃい。おや新顔だな。
ボーガ:オレ、タタカウ。シゴト、クレ。
ウォール:おーぅ。おめーは黙ってろぅ。話がすすまねぇ。
ボーガ:ン…。ワカッタ。
カイル:新しく冒険者になったものですが、ここで仕事をもらえると言うので、うかがったのですが…。
GM(斡旋所の親父):おう。そうかい。
マグ:ちょうどいい仕事ありませんか?
GM(斡旋所の親父):そうだね、駆け出しならこの宅配あたりがいいかな。あと買い付けの仕事もあるけど。
カイル:どこにいけばいいんですか?あと日程は?
GM(斡旋所の親父):そうだね。宅配は「要塞都市ラングリル」まで…
カイル:『城塞都市カーレ』?
ウォール:『ちがうだろーが。』(笑)
GM:はぁぁぁぁぁぁ…。
マグ:で、何日?
GM(斡旋所の親父):2日ぐらいだね。盗賊団が出る噂があるんで、回り道すれば4日ぐらいかな?
ウォール:報酬はドンくらいだ?
GM(斡旋所の親父):600GP。
カイル:4人で割ると結構少ないな…。2日間の行程で決まりだな。
マグ:仕事の内容は?
GM(斡旋所の親父):港にある漁協にいって、この書簡を見せればいい。引き渡される荷物はこれ(手に書面をもってピラピラとさせる。)と交換だ。そんなに多い量じゃない。
マグ:ちゃっちゃといって、おわしましょう。
カイル:行きで2日、帰りで2日。4日分の飯か…。報酬前借りできない?お金ないんだけど…。
GM(斡旋所の親父):基本的に全部後払いだよ。
全員:…。(10秒ほど黙る。)
ボーガ:オレ、メシ、ナイ。
ウォール:あっ、俺も。
カイル:お金人に貸しちゃったからなぁ…
マグ:自分一人ならかろうじて…
ボーガ:なぜ!
マグ:いや…初期の所持金が140あったもんで。でも4日分の飯をそろえるには10GP足りないな。
ウォール:俺なんか借金してまで装備そろえたのに。
ボーガ:それに良く見たら俺より堅てぇんでやんの。
マグ:あははは…。
GM:まぁ、T&Tじゃ盗賊も前衛要員だしな。
マグ:なんだかなぁ。
ボーガ:いいか、T&Tの盗賊はシーフでもスカウトでもない、ローグだ!
マグ:おおっ、そうか!(納得)
GM:そんな説明で納得するな!
マグ:いや、あまりにも的確な説明だったもんで(笑)

全員:と、言うわけで!(目が血走っている)
GM:<所持金、全部武器と防具に使ったか、こいつら…>
ウォール:日帰りでできる仕事、くれ!
カイル:今日中に帰らなければ餓死してしまう!!
GM(斡旋所の親父):が、餓死…。日帰りでできると言ったら、盗賊狩りしかないが…。
カイル:やる!!
GM(斡旋所の親父):おい!いくら何でも無理だ!
ボーガ:オレ、タタカウ。テキ、タオス。
カイル:今日何もしなければ、どうせ俺達は餓死するんだ。どうせ死ぬなら、少しでも可能性のある方を選ぶ!!(笑)
ウォール:そう!倒れるなら前のめりに!(笑)

10分ほど餓死で盛り上がる。

GM(斡旋所の親父):あー。わかった。そこまで言うなら、止めないが…。
マグ:とりあえず、その盗賊団の潜伏している辺りと言うのは?
GM(斡旋所の親父):うん。ここカザフから西に半日程行った辺りらしい。街道からかなり離れているらしいから、直接アジトを見つけている奴はいなんだ。
ウォール:よぉーし。半日だな。向こうで食料奪えば、ばっちりだぁ。
カイル:おぉー。その手があったかー。
ボーガ:オレ、イク、ハラヘッタ。
ウォール:おっしゃぁー。いくぞぉー!!
マグ:おー

カザフの町から西へ半日。斡旋所の親父からの情報を元に、辺りを捜索しはじめるPC達。

GM:全員器用度の1レベルセービングロール(以降SRと省略)をしてくれ。
ウォール:ん?どーすんだ。
GM:器用度あるよね。それに2D(6面サイコロ2個を表す。)を足して、20以上になればOK。そして成功失敗に関わらず、今振ったサイコロの出目に目標レベル−この場合は『1』だね−これをかけた値だけの経験点がすぐに入ってくるわけだ。
マグ:とりあえずやってみるか。
ボーガ:セイコウ。
カイル:…失敗。
GM:ちなみにサイコロの出目が4以下は自動的に失敗だ。そして、サイコロの出目がゾロ目「1,1」とか「2,2」とかの組み合わせの場合は、振り足す事ができる。と言うわけだ。
ウォール:これは?
GM:1,3か。4以下だから自動的に失敗。
ウォール:あう
マグ:おー、5ゾロ。もう1回振っていいのね。
GM:OK、余裕で成功だね。じゃあ、成功した人は、森の下草に、人間の足跡がある事に気づく。このまま奥に続いているようだ。
マグ:それじゃ追跡しよう。
GM:もう一度、器用度の1レベルSR。
ボーガ:シッパイ
マグ:シッパイ
カイル:…
ウォール:あ、2だ。
GM:1ゾロだから、振り足して良いんだよ。
ウォール:うっしゃ、成功。
GM:そのまま足跡を追跡しながら1時間ほど歩くと、木の陰から山小屋風の建物が見えてきた。まだ30m程離れており、こちら側からははっきりとした確認はできない。
ボーガ:ハラ、ヘッタ。ナンカ、クイタイ。(プレーヤーも)
ウォール:昼飯食ってねーもんな。(プレーヤーも)
マグ:大丈夫だ、あそこには食料がある!(自前のメシを食い終わっている。ちょっと安全)
ウォール:おー。そうだ、いくぞ。
ボーガ:メシー
GM:…。どうやって近づきます?
マグ:その前に、その山小屋に、人影は見えますか?
GM:見張りが1人たってるよ。
ボーガ:スリング、ツカウ。
GM:距離−近距離、大きさ−大、だから器用度で4レベルのSRしてくれ。
ボーガ:オレ、ムリ。ハズス。
マグ:静かに近づけます?
GM:それなら全員、器用度の1レベルSRでいいよ。
マグ:じゃ、ぎりぎりまで近づいて奇襲をかけよう
カイル:その手で行こうか、危険は少ない方がいいし。
ウォール:それでわ!
カイル:…、失敗。
ボーガ:シッパイ!
マグ:失敗!!
ウォール:失敗だぁ!!!
マグ:静かに近づこうとした意味が(笑)
ウォール:そうか!やはり俺達は餓えに逆らえなかったのか。(笑)
マグ:そうそう。盗賊がだんだんメシに見えて。
ウォール:うぉりゃー、メシー。と言って突っ込む。
GM:あーあ。意味ねーな。とりあえず…、全力疾走してくる君達に見張りが気づく。大声で「敵だー。」と叫ぶと、武器を構え君達の姿を確認する。戦闘だ。

第1戦闘ターン:
ウォール、マグ、カイルはともに通常戦闘。ボーガは知性度が低すぎるため、強制的にバーサーク戦闘。(これをやると、1戦闘ターンごとに体力が2点下がる。これが後の戦闘に、パーティーの戦力ダウンとしてつながった。)はっきり言って、見張りがかわいそうだった。モンスターレート(以降MR)10しかないうえに、1人しかいないので、4回死んでお釣りがきた。合掌。戦闘終了後、ウォール(魅力度が一番高いドワーフ?)がバーサークしたボーガをなだめる。

マグ:とりあえずどーする。これ。(ミンチと化した人を指す。)
ウォール:さっき、親玉呼んでたから、出てきたところを一気にたたく。
マグ:一人ずつ潰せばらくだしね。
GM:はいはい。しばらくすると、奥からばたばたと複数の足音が近づいて来るのが聞こえてきて、「どうした、何かあったのか?」と聞いてくる。
ウォール:いや、なにもありませんよ。(コエガウラガエッテル)
GM:…
マグ:それはちょっと(笑)
GM:「野郎ども、こいつらを叩きのめせ。」という声とともに、扉と窓から一斉に盗賊達が現れた。
マグ:げ…、そう来たか。
GM:当たり前だろ、まったく…。賞金首になるくらいの盗賊がすんなり出てくるかよ。それにあんなことやらかしたらふつう誰でも警戒するわ!

第1戦闘ターン:
ウォール、マグともに通常戦闘、カイルは敵側が親玉を含めて6人と言う人数を考慮して、「これでもくらえ」の魔法を手下にかける。ボーガはお約束通り、バーサーク戦闘。一方盗賊団側は、親玉がMR22、手下MR、MR10×5人。ダイスの出目が悪くあまりいいHITにはならなかった。それでも盗賊団側が勝ったのは人数のおかげだろう。結果、パーティー側が負けたものの、ダメージは総て鎧で止まり無傷。盗賊団側は「これでもくらえ」で1人死亡。

第2戦闘ターン:
ウォール、マグともに通常戦闘。カイルは、ボーガのHITが目に見えて悪い(個人修正は−5位らいまで下がっていた)ので、もう一度「これでもくらえ」を使いたかったが、体力が無いので、断念。通常戦闘を行うが、個人修正は−7。すでにパーティーのお荷物状態となっていた。ボーガはやはり、バーサーク戦闘(これしかできない…)盗賊団側、親玉の出目がさらに悪いものの、手下が奮闘する。結果、パーティー側がまたも負け、鎧で止まらなかったダメージがついにカイルにけがを負わせる。『まだ、大丈夫だ』

第3戦闘ターン:
パーティー達のHITが大きく下がる。バーサーク戦闘をしていたボーガが、あまりの疲労に武器を手放し、正気に戻ってしまった。(素手のダメージは1D)盗賊団側、今度は手下がふるわない。その分親玉ががんばった。結果、パーティー側の負け。ダメージを受けるが鎧で止まる。

マグ:なんか、やばそうだね…。

第4戦闘ターン:
パーティー側こりずに戦う。盗賊団側、勝てると踏んだのか、全員に気合いが入る。結果、パーティー側の負け。さらにカイルがダメージを受ける。

カイル:次くらったら、死ぬな。
ウォール:おい、やばいじゃん。
マグ:逃げますか。
ボーガ:ワカッタ。
GM:それじゃ、パーティーの中で一番早さ(SPD)の遅い人が、1レベルのSRをしてくれ。成功すれば全員で一気に脱出可能だ。
ボーガ:ダレダ?
ウォール:俺じゃないな。
マグ:俺か…。失敗…。

第5戦闘ターン:
パーティー側、ウォールもバーサーク戦闘しようとするが、カイルに止められる。良い判断だが合計HITは相変わらず低い。盗賊団側も、ダイスの出目が極端に悪い。結果、やっぱりパーティー側の負け。

GM:逃げてくれ。
マグ:失敗!

第6戦闘ターン:
パーティー側のHITはトコトン低い。盗賊団側のHITが平均値に戻る。結果、それが致命傷となり、カイル死亡。

カイル:…。
GM:逃げてくれ。
マグ:成功!!(笑)
カイル:なぜもっとはやく出さん!!(笑)
マグ:そんな事言っても。(笑)
GM:君達は、上手く盗賊団から脱出できた。ところでカイルの死体は誰が持っていくの?
ボーガ:オレ、タイリョク、2。
マグ:わかりました。オレが持っていきます。
GM:かくして君達は、カザフの町に逃げ帰った…。あれ?

マグ:『リセットを要求する!!(笑)』
GM:…
カイル:ちょっとシナリオに無理があるんじゃないかな?
GM:お前らが飯を買っていなかったり、冒険前にお金を全く持っていないのがおかしいんじゃないか。
ボーガ:パーティーがお金を持っていないときにはGMが最初にお金を少し貸し出すことを提案した方がいいんでは?
カイル:そうでないと、こういう場合必ず破滅の道をばくしんするような気がするけども…普通、駆け出しの冒険者は、実力のない自分たちに金を貸してくれるとは思わないでしょ?。
GM:そうかもしれないな。
カイル:それでは、もう一度最初からやってみましょう。
GM:…と言うわけで、君達はカザフの町の宿屋で目が覚めた。

そしてここから本来のテストプレイが始まったのだが…。

数時間後…
再び盗賊団のアジトにて。
前回の失敗プレイのデジャブーを感じながら進む冒険者達。
しかし、今度は幾多の冒険をこなし、だいぶレベルアップをしている。
このプレイの悲劇(喜劇)は、前回の失敗が全員の脳裏に刻み込まれていたことにあるのだろう…。

冒険の途中で、前日全く寝ていなかったカイルのプレイヤーは寝てしまう。
GM:<よっぽど疲れてたのかな?>
それでも、テストプレイは進む。

盗賊団のアジトの中。プレイも佳境に入り、敵の親玉との戦闘になる。
デジャブーを感じる冒険者たちと盗賊団。

ウォール:何か、前にたたきつぶされたような記憶が…(笑)。
GM:何か前にたたきつぶしたことがあるような気がするなあ(笑)。

雑魚どもをたたきつぶし、敵の親玉とその護衛を追いつめ、後一歩というところで、その問題発言は起こった。
GM(盗賊団の親玉):きさまらどこの者だ!!
マグ:え〜っと…
ウォール:俺たちは…
カイル:(突然起き出して)俺達は『餓えたサル』だぁ〜!!
全員:大爆笑

戦闘中の会話で、突然起き出したカイルが唐突に言った台詞で、全員大爆笑。戦闘は一時中断した。前回失敗した冒険者達の行動をあまりにも的確に表現していたため、みんな大いに受け、これ以後、この『餓えたサル』という言葉は、冒険者一行のパーティー名と行動原理と化してしまう。
カイル:だってその通りっしょ。
GM:ごもっとも。

…この後、のプレイは以下のような展開が続いたのだった。
GM:貴様ら、何者だ!
全員:「俺たちは、『餓えたサル』だぁ!」
GM:ひぃー、き、貴様らがあの…

合掌…
GMから一言:お前ら、メシぐらい買えよ。

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